2008年8月24日日曜日

トスカーナの旅
























イタリア・トスカーナ地方の旅から帰ってきた。今回はフィレンツェとシエナの中間地点、ぶどうとオリーブの畑が広がる山の中にアパートを借りて、そこに1週間滞在した。アパートには3つのベッドルームがあり、共同の台所、シャワー、洗面所、トイレが付いていて、自炊できるように鍋、包丁、皿などのほか、テーブルクロスやエスプレッソメーカーまでイタリア生活に必要なものは基本的に全部備え付けられている。オリーブ畑を見渡せる景色のいい所にプールもついており、観光はそこそこに、プールサイドでゆっくり身体を焼きながら1週間過ごすのがヨーロッパ風の休暇の過ごし方らしい。

が、我々ファミリーはプールにつかることはほとんどなく、毎日車を走らせては近郊の街を観光したり、美味いものを貪欲に求めたり、忙しく過ごした。



まず初めに行ったはピサ。かの有名なピサの斜塔は意外と規模が小さくしょぼいのでびっくりした。この街はこの斜塔だけが見所と言っても過言ではない。ここでは皆、ピサの斜塔を手で支えるというお決まりのポーズ写真を撮ることになっている。




そしてルッカ。ここは旧市街を取り囲む城壁が完璧な形で残っていて、城壁の上を散歩することができる。城壁の上の木陰ではさわやかな風が吹いていた。ここトスカーナ地方はカラッと暑くて、日陰は涼しい。






















フィレンツェ。ここは2回目の訪問となるが、何度行っても金と権力で豪勢に造られた中世の建築物に圧倒される。前回、4時間待ちで入ったウフィッツィ美術館。今回はインターネットでチケットを予約して行ったので、待たずに入れた。この予約チケットの価格は窓口で並んで買うチケットの2倍以上(約20ユーロ)するのだが、4時間の待ち時間がなくなるのは大きい。まさに時は金なり。




サン・ジミニャーノ。たくさんの塔がそびえ立つ中世のマンハッタン。昔、金持ちが競って高い塔を建てたのが残っている。城壁に囲まれた街の中は、かなり観光地化されており、メインの通りにはみやげ物屋が並んでいる。こんなに観光客が毎日訪れたら地元の人はさぞかしうっとうしいだろうなあ…と思ったが、よく考えたらここの地元民の多くが観光客相手の商売をしているのだった。観光客に対する感情は「ラブ&ヘイト」といったところか。



シエナ。ここも中世の面影をそのまま残したオレンジ色の街。毎年、地区対抗の競馬が繰り広げられる「カンポ広場」が有名。すばらしく美しい街なのだが、我々はあまりにも毎日、中世の都市を訪れていたので、だんだん感動が薄くなってくる。いかん。



チェッチーナの海岸。砂浜の近くに松林が広がり、日本とはちょっと違った種類の蝉がギュンギュン鳴いていた。地元の人々はパラソルや椅子を持参して来て、松林の下でゆっくり昼寝をしたり読書したりしている。我々はゴザさえ持っていかなかったので、松の下にビニール袋などを敷いて、近くのスーパーで買ってきたパンにチーズやハムをはさんで食べた。この海岸にはマウリッツへのサービスのつもりで出かけたのだが、当のマウリッツは全く海に関心を示さず、松ぼっくりで地味~に遊んでいた。



ヴォルテッラ。海岸からの帰りに立ち寄った、これまた古い街。ここはローマ時代よりずっと古い2500年前の城壁の一部が残っている。街の古い市庁舎の前で、地元の男性がクラシカルギターを奏でていた。この旅ももう終盤。夕日に響く悲しげなメロディを聞いていると、だんだん寂しい気分になってきた。



とにかく見どころの多いイタリア。あれもこれもと見ているうちに、あっという間に1週間が過ぎてしまった。それにしても、中世の城壁や建物がそのまま残る狭い路地の数々は圧巻だった。街の風情はそのままで、人間だけがまるでヤドカリみたいに何代も何代も入れ替わっている。中世の街をうろうろしているうちに、自分が何人で、何時代の人間なのか、よく分からなくなりそうだった。田舎町のとあるバーで、地元のおやぢたちがエスプレッソを飲みながらテレビで北京オリンピックを観戦しているのを見たときには、ちょっとほっとした。

トスカーナ地方の最大の楽しみは、美味しい食事とワインである。もう、どのレストランに入ってもレベルは一定以上。この安心感はオランダでは決して得られない。トスカーナ地方は肉料理が中心で、「フィオレンティーナ」という地元のステーキ(厚さが4-5cmあり、骨付き)が特に有名。ただ、最低オーダーが1キログラムからというところも少なくなく、我々にはちょっと量が多すぎたし、うちの母に言わせれば、「クイーンズ伊勢丹の牛肉の方が美味しい」。しかし、この地方独特の太麺「Picci(ピッチ)」やら、手作りのラビオリの美味さは、ちょっと今までに味わったことがないぐらい素晴らしかった。酸味の強い地元のキャンティワインも料理に良く合い、毎日トスカーナ料理でも飽きることがなかった。しかし、オランダについたとたん、我々日本人親子はこぞって白いご飯と昆布と味噌汁で夕食を済ませた。やっぱり白い飯もいい。